Momijiが実際にDisney+の作品を使って勉強する中で、英語学習的に〝気になるな〟〝おもしろいな〟と思った場面を、解説とともにご紹介♪
今回は『ピーター・パン』より、冠詞が読解のカギを握るフック船長の台詞を取り上げます。
【今回の台詞】次の狙いはティンカー・ベル
今回取り上げる台詞はこちら。
Ah, yes, a jealous female can be tricked into anything.
ピーター・パン 00:48:19~
ピータ・パン&ワニとのバトルの末、命からがら自分の船へ戻ってきたフック船長の台詞です。
フック船長を早くこの島から離れる気にさせたくて、ウェンディへのやきもちが原因でティンカー・ベルがピーター・パンに追放されたという噂を船長に伝えるスミー。
しかしスミーの思惑とは裏腹に、フックはその噂をきっかけに、新たなピーターの隠れ家発見作戦を思いつきます。
意気揚々と身支度を整えつつ、フック船長が不敵な笑みと共につぶやくこの台詞、実は英語学習者の永遠の悩みである a と the の違いを学ぶのにうってつけの内容となっています。
a と the の違いで、フック船長の言葉にどんな意味の違いが生まれるのか…
一緒にチェックしていきましょう!
【今回の注目ポイント!】a と the で意味が大違い!?
Ah, yes, a jealous female can be tricked into anything.
jealous female は誰を指す?
今回の台詞の主語は a jealous female 。
まず jealous female の意味から確認していきましょう。
jealous は「やきもち焼きの」「しっと深い」という意味。
日本語の会話でもよく使う〝ジェラシー〟が形容詞のかたちになったものです。
そしてfemale は、ここでは名詞として使われていて、意味は「女」「女の子」。
つまり jealous female は〝嫉妬深い女性〟という意味になります。
female は数えられる名詞なので、複数形ではなく単数形のままで使おうとすると、jealous female の前には必ず冠詞の a か the をつける必要があります。
冠詞は日本語には存在しない概念なので、英語をしゃべったり書いたりするときに、
〝この場合は a ? the ?? それとも複数形???〟
と毎回頭を悩ませている学習者も多いのではないかと思います。
(もちろん私もです…!)
でもだからといって、
〝もうよくわかんないから a でも the でもどっちでもいいや!〟
とテキトーな冠詞を選んでしまうと、その文の意味がガラッと変わってしまうことがあるので、要注意です!
今回のフック船長の台詞も、 jealous female の前に a がつくか、それとも the がつくかによって、指しているものが大きく変わってくる典型例となっています。
a jealous female の場合
まずは、フック船長が実際に台詞の中で言っている a jealous female から見ていきましょう。
初めて習うときに大抵〝1つの〟という意味だと教わるかと思われる冠詞の a。
よほど〝1つの〟という事実を強調したいとき以外は、和訳するときにわざわざ訳すことは少ないので、少し英語に慣れてくると読み飛ばしてしまう人もけっこう多いのでは?と思います。
そんな a は厳密に言うと、その会話や文章の中で初めて出てくるもの・人や、特に何か・誰かを限定する必要のない〝ひとつのもの〟や〝ひとりの人〟のことを言っているよ!という意味を含んでいます。
なので、a jealous female は、世界中にたくさんいるであろう、特に誰とは限定しない〝嫉妬深い女性1名〟を指していることになります。
the jealous female の場合
では、もしフック船長が the jealous female と言ったらどうなるのでしょう?
a がその会話や文章で初めて登場するもの・人を指すのとは対照的に、the は既に会話や文章の中で話題に出たものを再度言及するときに主に使われます。
なのでこの文章の主語がもし the jealous female なら、それはどこにでもいる〝嫉妬深い女性〟ではなく、それまでスミーが話していた〝嫉妬深い女性〟、すなわちティンカー・ベル張本人のことを指していると考えられる、というわけなのです!
この2つのパターン、比べてみていかがでしたでしょうか?
フック船長が、広く嫉妬深い女性一般について話しているのか、それともティンクのことのみをを指しているのかで、台詞から受ける印象がちょっと異なってきますよね?
それについては、のちほどオタク心全開で語るとして…
複雑な英文になればなるほど、この〝 a と the をちょっと読み違えるだけで、意味がまったく変わってしまう〟現象が発生しがちです。
よく見かける単語だから…と侮らずに、しっかり意味を確認してあげてくださいね♡
・a は主にその会話や文章で初めて登場するもの・人を指す場合に使われるが、
the は既に会話や文章の中で話題に出たものを再度言及するときに主に使われる
・場合によっては a と the の違いで文の大きく意味が変わることもあるので注意
【読解 tips】 フック船長の〝トリック〟 etc.
続いてその他の細かい単語のチェックにいきましょう!
主語の部分については【今回の注目ポイント!】で解説済みなので、ここでは動詞をひとつだけ紹介します♪
Ah, yes, a jealous female can be ①tricked into anything.
①【単語】trick 〈人〉 into A … 〈人〉をだまして A させる
trick と聞くと手品などの〝トリック〟が浮かびますが、実はコレ、動詞としても使うことができる単語なんです!
手品も、悪意はないとはいえ〝人をだます〟ものなので、イメージがつきやすいんじゃないかな~と思います。
【和訳に挑戦!】船長、意外と女性の扱い慣れてる説!?
最後の仕上げに、この台詞を日本語に直訳してみましょう!
Ah, yes, a jealous female can be tricked into anything.
a jealous female は、【今回の注目ポイント!】で確認した通り、〝嫉妬深い女性〟という意味でしたね。
それも、ティンカー・ベル本人のことを指しているのではなく、特に誰かを特定しない〝嫉妬深い女性〟1名という意味でした。
そして be tricked into anything については、先ほど紹介した trick 〈人〉 into A が受動態で使われているので、〝騙されてどんなことでもする〟と訳してみます。
さらにこの文には助動詞の can が使われています。
can は「…できる」という訳がいちばんポピュラーですが、〝騙されてどんなことでもすることができる〟というのは、日本語として違和感があるので、辞書に載っていた「時に…することがある」という訳を使って、〝騙されてどんなことでもすることがある〟と訳してみました。
ということで、私なりの直訳は、
〝ああ、そうとも、嫉妬深い女性は騙されてどんなことでもすることがある。〟
という感じです!
これでもまだまだ日本語として違和感が残りますが、要するに〝嫉妬深い女性は騙しやすい〟ということをフック船長は言っているわけですね!
ティンクのことだけならまだしも(?)、〝嫉妬深い女性は騙しやすいものだ〟と、いかにも知ったふうに語っている船長…
そう、ここで the と a の違いに、〝フック船長、過去にもそんなふうに嫉妬心にかられた女性を利用した経験があるのでしょうか…?〟と、オタクは色々想像を膨らませてしまうわけなのです!笑
ちなみに公式の日本語吹替はこうなってました。
Ah, yes, a jealous female can be tricked into anything.
嫉妬に燃えた女をだますなら朝飯前。
わあ…朝飯前ときましたよ…!
ますます女性を騙すのに慣れている感が出ていますね。
これはもう『マレフィセント』や『クルエラ』のように船長の過去エピソードにフォーカスした作品を作ってもらうしかない!?
こんなふうに a や the の細かい違いだけで、作品やキャラクターに対する考察がますます捗ることもあります!
英語の勉強!と思うと身構えてしまいがちですが、大好きな作品やキャラクターについてもっと想像を膨らませるためのネタを探すぞ!という気持ちなら、きっと楽しく取り組めるはず♪
ぜひオタク心を全開にして、英語の台詞と向き合ってみてくださいね!
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