ディズニー全長編アニメ映画の英語と日本語タイトルを比較してみた。【第2回】『イカボードとトード氏』~『おしゃれキャット』編

コラム

長年に渡って愛されているウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編アニメーション映画作品。
しかし、日本ではお馴染みの映画のタイトルが、原語である英語版ではまったく違う!ということもしばしば…
本シリーズは、そんなウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編アニメーション作品のタイトルを、英語と日本語で徹底比較していきます。
第2弾のこの記事では『イカボードとトード氏』から『おしゃれキャット』までの10作品を取り上げます。

はじめに ~ 凡例

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編アニメーション作品の原題と邦題を比較していく本記事。
原題と邦題の関係性が次の5つのうちのどれにあたるかを1作品ずつ分析していきます。

  1. 原題をそのままカタカナ表記
  2. 原題の一部をカタカナ表記
  3. 原題を日本語に直訳
  4. 原題の日本語直訳をベースに一部改変
  5. 原題とまったく異なる日本語タイトル

『イカボードとトード氏』(1949)

今回の記事のトップを飾るのは『イカボードとトード氏』
クレイジーなヒキガエルのトード氏のドタバタな物語と、首無し騎士のホラーな伝説に巻き込まれるイカボード先生の物語の、二つの中編アニメーションを組み合わせたオムニバス形式の作品です。

トード氏のクレイジーぶりといい、イカボード先生の物語の衝撃的なオチといい、かなり攻めた内容の作品で、ディズニーオタクの間ではカルト的人気のある作品です。

邦題はディズニー作品お得意の主人公の名前をそのままタイトルにした形式になっていますが、果たして原題はどうなっているのでしょうか?

The Adventures of Ichabod and Mr. Toad

イカボードの名前の Ichabod と トード氏の名前の Mr. Toad に加えて、英語のタイトルには adventures という単語が使われています。

adventure … /əd’ventʃər/ 【名詞】冒険、はらはらする経験

直訳すると“イカボードとトード氏の冒険”という意味ですね。
なのでこちらは④原題の日本語直訳をベースに一部改変に認定したいと思います

ちなみに toad は「ヒキガエル」という意味。

toad … /toud/ 【名詞】ヒキガエル、ガマ

カエルを表す英単語といえば frog が有名ですが、それは比較的小さくて緑色のカエルを指す単語で、大型のヒキガエルの toad とは区別されるのだそう。
なので『プリンセスと魔法のキス』の変身後のティアナやナヴィーン、それからザ・マペッツのカーミットは toad ではなく frog と呼ばれます。
日本語ではどんな大きさや種類であろうとカエルは“カエル”なので、そこを明確に区別してまったく別の単語で表現しているのは英語ならではの特徴で興味深いですね!

『シンデレラ』(1950)

お待たせしました。
丸々一本の映画で一つの物語を描くタイプのディズニー長編アニメーションがここでようやく復活。
その記念すべき復活第1作目が、みなさんご存じの『シンデレラ』です。

継母や義理の姉妹に虐げられながらも夢見る心を失わなず、最後には幸せをつかむシンデレラ♡
ガラスの靴やカボチャの馬車といった象徴的なアイテムもたくさん登場する、まさにディズニーを代表する作品のひとつです。

この作品は邦題・原題ともに、典型的な“主人公の名前=映画のタイトル”というパターン

Cinderella

ということで、こちらは①原題をそのままカタカナ表記に分類します!

『ふしぎの国のアリス』(1951)

『シンデレラ』ですっかりかつての勢いを取り戻したディズニーの長編アニメーション。
ここからは怒涛の有名作品ラッシュとなります!
ということで、お次に公開されたのはルイス・キャロルの児童文学を映画化した『ふしぎの国のアリス』です。

アリスが夢の中で体験するヘンテコな冒険を描いたこの作品。
キャラクターの動きの面白さや音楽や映像の美しさはさすがディズニーですが、ストーリー自体は本当に脈絡がないし、これといった感動的な展開があるわけでもなく…w
キャラクターの知名度とは裏腹に、ディズニーの長編アニメーションの中ではかなりの異色作と言えるでしょう。

そんなこの作品の原題はこちら。

Alice in Wonderland

wonderland 自体はディズニーやキャロルの造語ではなく、もともと「おとぎの国」という意味がある単語だそう。

wonderland … /’wʌndərlænd/ 【名詞】おとぎの国

なので『ふしぎの国のアリス』というタイトルはほぼ原題の直訳と考えてよいでしょう。
③原題を日本語に直訳に認定です!

ちなみにキャロルの原作小説の原題は Alice’s Adventures in Wonderland 、直訳すると“不思議の国でのアリスの冒険”なので、実は微妙にディズニー映画のタイトルと異なっています。
日本語では原作小説とディズニー映画の両方とも“ふしぎの国のアリス”というタイトルで通っているので、なんだか意外ですね!

『ピーター・パン』(1953)

続いて登場するのは『ピーター・パン』
こちらも説明不要レベルの超有名作品ですね。
原作はイギリスの劇作家バリーの戯曲(のちに本人により小説化)
ピーター・パンとネバーランドのおとぎ話を愛してやまない三人姉弟が、ある夜本物のピーター・パンと出会い、ネバーランドへの冒険に出発!というお話です。

東京ディズニーシーのファンタジースプリングスでも、『塔の上のラプンツェル』、『アナと雪の女王』という2010年代以降の作品に混じって、唯一ウォルト存命時代の作品からエントリーされています。

この作品も『シンデレラ』同様、邦題・原題ともに“主人公の名前=映画のタイトル”というパターン

Peter Pan

なので①原題をそのままカタカナ表記に認定です。

↑『ピーター・パン』はこのブログでも徹底分析しています!

『わんわん物語』(1955)

続いては久々の動物主人公の長編アニメーション、『わんわん物語』です。
お嬢様犬のレディと野良犬のトランプの恋を描いたラブストーリー♡
この頃のディズニー作品にしては珍しく、原作のないオリジナル作品です。

2匹がミートボール入りのスパゲッティを食べながら偶然キスをする場面は、ディズニーの長編アニメーションの中でも屈指の有名シーンです。

さて、そんなこの作品、邦題の『わんわん物語』は“日本独自のタイトルをつけました”感がプンプンしますねw
原題は一体どうなっているかというと…

Lady and the Tramp

というタイトルになっています。
“レディとトランプ”。
主人公2匹の名前がそのままタイトルになっているようにも思えますが、実はこのタイトルにはそれ以外にももう一つ意味があります。

lady … /’leidi/ 【名詞】②貴婦人、淑女

tramp … /træmp/ 【名詞】③浮浪者、放浪者、渡り職人

そう、そもそもレディとトランプの名前自体が、裕福な家庭で暮らす飼い犬、自由気ままにその日暮らしを送る野良犬、というそれぞれの生き方を象徴する単語に由来しているのです。

原題では主人公2匹の設定や関係性までイメージできるタイトルになっているのがかっこいいですよね。

ということでこちらは今回の記事初の⑤原題とまったく異なる日本語タイトルに分類します!

『眠れる森の美女』(1959)

本記事2本目のプリンセス作品は1959年公開の『眠れる森の美女』
シャルル・ペローの童話をもとに、魔女マレフィセントに16歳の誕生日に永遠の眠りにつく呪いをかけられてしまったオーロラ姫の物語が描かれます。

チャイコフスキーの楽曲をベースにした音楽に、それまでの丸みを帯びたスタイルとは一線を画すスタイリッシュなキャラクターデザイン…と、非常に芸術性豊かな作品。
そしてマレフィセントは、その後“ディズニーヴィランズのリーダー”的な役割が定着し、彼女が主役の実写映画が作られるほどの人気を博しています。

そんなこの作品の原題はこちら。

Sleeping Beauty

動詞 sleep 「眠る」が -ing の形になって、現在分詞として beauty を修飾している、という構造です。
そして beauty の意味はもちろん「美女」。

beauty … /’bjuːti/ 【名詞】②美人、美女

なので原題を直訳すると“眠れる美女”となります。
邦題と比較すると、“森”要素がないのが相違点ですね。

確かに“眠れる森の美女”と聞くと、それこそ白雪姫のように森の中で眠りについているプリンセスの姿が浮かぶけれど、オーロラ姫が眠っているのって森の中じゃなくてお城でしたもんねw
でもこの“眠れる森の美女”という語感があまりに良すぎて、ぶっちゃけ私もこの記事を書いて深く考えるまで、そこに違和感をもったことはありませんでしたw

ということでこちらは④原題の日本語直訳をベースに一部改変に認定です。

『101匹わんちゃん』(1961)

プリンセスもの1作品を挟んで、またしてもわんちゃんネタ。
ダルメシアン犬のポンゴ&パディータが、ダルメシアンの毛皮でコート作りを目論む悪女クルエラから子犬たちを救出する大冒険を描いた『101匹わんちゃん』です。
こちらはドディー・スミスの児童文学作品が原作となっています。

こちらも先ほどの『眠れる森の美女』のマレフィセントに続いて、ヴィランであるクルエラが圧倒的な存在感を放っている作品。
彼女のインパクトは凄まじく、のちに制作された実写リメイクの『101』シリーズはもはやグレン・クローズ演じるクルエラが主役と言っていい構成でしたし、それとは別に、エマ・ストーンが若きクルエラを演じる『クルエラ』という実写映画も制作されました。

そんな『101匹わんちゃん』の原題はこちら!

101 Dalmatians

邦題では「わんちゃん」と表現されている部分が、原題ではより具体的な犬種の“ダルメシアン”となっています

dalmatian … /dæl’meiʃən/ 【名詞】②ダルメシアン

なので原題を直訳すると“101匹のダルメシアン”といったところでしょうか。

これは私の推測でしかないのですが、おそらく『101匹わんちゃん』が公開された当時は、日本でのダルメシアンという犬種の認知度はまだ低かったはず。
“101匹のダルメシアン”という原題通りのタイトルで公開しても作品の内容が伝わらない、と判断されて、今の邦題が生まれたのかな?なんて思ったりしています。

ということでこちらは④原題の日本語直訳をベースに一部改変に認定です。

『王様の剣』(1963)

続いての作品は、アーサー王の少年時代を描いた『王様の剣』
原作はT. H. ホワイトの小説です。

ディズニーの歴史的には、あのシャーマン兄弟が初めて音楽を担当した長編アニメーションということでも重要な作品ですね!

そんなこの作品の原題はというと…

The Sword in the Stone

使われている英単語は、日本語話者にとっても馴染みの深いものではないでしょうか?

sword … /sɔːrd/ 【名詞】①剣、刀

stone … /stoun/ 【名詞】①石、石材

直訳すると“石の中の剣”
といっても、ワートが剣を引き抜くあの有名な場面からもわかる通り、石の中に剣がすっぽり埋まっているわけではなく、石の台に剣の先端部分のみが in しているイメージです。
より実態に即して訳すと“石に刺さった剣”という感じでしょうか

“剣”というワードは邦題にも含まれていますが、“石”の要素はすっぽり抜け落ち、代わりに“王様”というワードが新たに付与されています。
まあ、確かに“石に刺さった剣”ではお世辞にもあんまり面白そうな話には聞こえませんもんね…w

ということで、こちらの邦題は④原題の日本語直訳をベースに一部改変に分類します!

ちなみに、もし『王様の剣』が現代の作品だったら、きっと邦題は“ワートと魔法の剣”とかになっていたんだろうな~とふと思ったりしましたw

『ジャングル・ブック』(1967)

1966年にウォルトが亡くなってから初めて劇場で公開された長編アニメーションが、こちらの『ジャングル・ブック』
キップリングの小説を原作に、オオカミに育てられた人間の少年、モーグリのジャングルでの冒険を描いた作品です。

日本ではそこまで知名度は高くありませんが、アメリカ本国をはじめ海外での人気はかなり強く、いちばん好きなディズニーの長編アニメーションに『ジャングル・ブック』を挙げるクリエイターや俳優もとても多い印象です。

すべてカタカナ語で構成されている邦題からすでにお察しの通り、この作品も、①原題をそのままカタカナ表記のパターンです。

The Jungle Book

ちなみにキップリングの原作もこのタイトルですし、その日本語翻訳版も1950年代以降は一貫して「ジャングル・ブック」という邦題が使われているようです。
もうモーグリの物語にはすっかりこのタイトルが定着してしまっているんですね!

『おしゃれキャット』(1970)

今回の記事のラストは『おしゃれキャット』
お屋敷暮らしの飼い猫であるダッチェスと野良猫のオマリーが繰り広げるラブストーリー♡
…と聞くと猫版『わんわん物語』というイメージになりがちですが、ダッチェスが3匹の子猫のママであったり、シャンソンやジャズ、クラシックなど多様な音楽ジャンルをひとつの作品の中で楽しめたりと、ただの焼き直しになっていないところがさすが!

日本ではそれほど知名度の高くない作品だったはずが、2000年代ごろからこの作品に登場する子猫のうちの1匹、マリーのグッズが突然大流行!
いつのまにかディズニーグッズ市場に欠かせない作品となりました。

そんな『おしゃれキャット』の原題はこちら!

The Aristocats

多分今回紹介してきた原題の中で、一番特殊なのがこのタイトルだと思います。
なぜって、この単語、辞書には載っていないから!

こちらは aristocrat 貴族と cat 「ネコ」を掛け合わせた造語なのです

aristocrat … /’əristəkræt/ 【名詞】貴族

cat … /kæt/ 【名詞】ネコ

パリのお屋敷に住むダッチェスや子猫たちは、まさに上流階級の貴族猫というわけですね!
なんとも洒落たタイトル♡

しかしこれを“貴族猫”という邦題にしてしまうと、なんだかちょっと違和感…
字面がなんだか某居酒屋みたいですし…w

なので『おしゃれキャット』という邦題を考えたかたは本当に天才だと思います!
やっぱり日本人がフランスやパリと聞いてぱっと浮かぶイメージって“オシャレな街!”じゃないですか。
原題の直訳ではないけれど、“パリのおしゃれなお屋敷で優雅に暮らす猫たち”という原題を通して伝えたかったイメージがちゃんと伝わってくる…
そんな秀逸な言葉選びだと思います!

ということで、 cat 要素は維持しつつも aristocrat 要素は“おしゃれ”というワードに置き換わっているこちらのタイトルは、④原題の日本語直訳をベースに一部改変に分類します。

【まとめ】ディズニー長編アニメーション映画 11〜20作目の原題/邦題比較一覧

最後に今回紹介したディズニー長編アニメーション映画10本の原題と邦題をひとめで比較できるように一覧にしてみました!
分類もあわせて表示しています。

No.邦題原題分類
11イカボードとトード氏The Adventures of Ichabod and Mr. Toad ④原題直訳一部改変
12シンデレラCinderella①原題すべてカタカナ表記
13ふしぎの国のアリスAlice in Wonderland③原題直訳
14ピーター・パンPeter Pan①原題すべてカタカナ表記
15わんわん物語Lady and the Tramp⑤原題に関連なし
16眠れる森の美女Sleeping Beauty④原題直訳一部改変
17101匹わんちゃん101 Dalmatians④原題直訳一部改変
18王様の剣The Sword in the Stone④原題直訳一部改変
19ジャングル・ブックThe Jungle Book①原題すべてカタカナ表記
20おしゃれキャットThe Aristocats④原題直訳一部改変

今後もこのシリーズはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編アニメーションの全作品比較制覇を目指して不定期に更新予定です♪
次回の更新もどうぞお楽しみに♡

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