本当に同じ曲!?「お母様はあなたの味方」リプライズ
今回の記事では怖~い場面をピックアップ。
ラプンツェルが塔を出て初めて、マザー・ゴーテルに再会する場面です。
母親とのまさかの再会に困惑するラプンツェルを、塔に連れ帰ろうとするゴーテル。
しかしユージーンとの旅を通じて自信をつけたラプンツェルは、そう簡単にはゴーテルの言いなりにはなりません。
反抗的なラプンツェルの態度に苛立ちながら、ゴーテルは再び〝あの曲〟でラプンツェルを翻弄します。
映画の序盤でゴーテルが歌った「お母様はあなたの味方」が、ここで再び登場!
(一度目の登場時の歌詞はこちらの記事で以前に詳しく解説しました^^)
一度目の歌唱時は〝優しい母親〟の仮面を被っていたゴーテルですが、この場面ではヴィランとしての本性が一気に大爆発!
そのあまりの雰囲気の変わりようにゾッとしてしまいます。
そして… 実を言うと、私、初めて『塔の上のラプンツェル』を観たとき、この場面でゴーテルが歌っているのが、映画序盤でゴーテルが歌っていたのと同じ曲だと気づかなかったんです。
だって、曲調も雰囲気も初回の歌唱時とはあまりにも違いすぎて…!
だけど、後からじっくり日本語吹替の歌詞と英語の歌詞を見比べるうちに、こんなふうに思いました。
私が「お母様はあなたの味方」のリプライズに気づけなかったのは、
もしかしたら日本語吹替で観ていたからかも!
英語の歌詞なら、もっとすんなり同じ曲だとわかったかも!
一体日本語吹替と英語の歌詞で何がそんなに違ったのか?
今回はそんな「お母様はあなたの味方」の謎について解説しますね!
英語と日本語で曲名を比較!
「お母様はあなたの味方」は、まず曲名自体が英語と日本語で微妙に異なるって知っていましたか?
日本語のタイトルは、先ほどから連呼しているように、
「お母様はあなたの味方」
なのですが、英語のタイトルは、
“Mother Knows Best”
といいます。
mother の意味はもちろん「母」。
knows は「知っている」という意味の know に三人称・単数・現在形の -s が付いたもの。
best は〝good の最上級〟というイメージが強いですが、実は副詞の well 「よく」の最上級でもあります。
know とセットで次のように使われることも多いですね。
I know her well. (私は彼女をよく知っています。)
この well が最上級の best になっていると考えると、「お母様はあなたの味方」の原題は直訳すると
〝お母様がいちばんよく知っている〟
という意味になると考えられます。
さらに、海外のポップカルチャー史に詳しいかたなら、曲名を聞いて次の作品を思い浮かべたかもしれませんね。
「パパは何でも知っている」という1950年代のアメリカを代表するテレビドラマ作品があります。
こちらの原題がまさに Father Knows Best でした。
ゴーテルの主張もまさに〝ママは何でも知っている〟といったところでしょうか。
…と、少し話がそれてしまいましたが、この “Mother Knows Best” という曲名は、歌詞のワンフレーズとして曲中に何度も登場します。
ゴーテルの一度目の歌唱シーンの中だけでも、私が数えた限りでは6回もこのフレーズが登場します!
こんなに繰り返し歌われたら、嫌でも耳に残っちゃいますね…
では、歌詞の中に何度も曲名が登場する英語版に対し、日本語吹替の歌詞はどうでしょうか?
まず曲名自体が長いので、英語のように歌詞中に何度も登場させることは不可能ですよね。
さらに、英語で Mother knows best と歌われている箇所も、「あなたのためよ」「信じなさい」など複数パターンの歌詞が充てられています。
そう、あいにく日本語吹替の歌詞には、英語の歌詞の Mother knows best に相当するキャッチーかつ繰り返し使われているフレーズが存在しないのです。
キャッチーな繰り返しフレーズのあるなしが、のちのち日本語吹替版だとリプライズに気づきにくくなる現象の原因へと繋がっていきます…!
主語が変化! リプライズで活きる英語フレーズ
お待たせしました!
ここからようやく今回の記事の本題である「お母様はあなたの味方」のリプライズ版のお話です。
一度目の歌唱シーンでは、ゴーテルが一方的に外の世界の危険を歌で語り聞かせ、ラプンツェルはそれを受け入れることしかできませんでした。
しかし、冒頭にも説明したように、リプライズ版が歌われるこの場面では、塔へ自分を連れ帰ろうとするゴーテルに対して、ラプンツェルは〝ノー〟を突きつけます。
外の世界を知ったラプンツェルにとって、もう〝お母様は何でも知っている〟わけじゃなくなってしまったのです!
そこで活きてくるのが、英語の曲名でもあり、一度目の歌唱時に何度も歌詞に登場した Mother knows best というフレーズ。
リプライズではこのフレーズが形を変えて登場します。
そう、リプライズでは、元々 Mother knows best と歌われていた箇所に、
Rapunzel knows best
と主語を Mother から Rapunzel に変えたフレーズが登場するのです!
母親に反抗するようになったラプンツェルに対して、
あなたのほうが私より
世間をよく知ってるっていうのね(*`Д´*)
と、ゴーテルが苛立ちと皮肉をこめて歌っている、というわけですね。
そして、どんなに曲調が変化しても、この ○○ knows best というフレーズが共通していることによって、
あ、最初に塔でゴーテルが歌っていたのと同じ曲だ!
と観客は気づける、というわけなのです。
一度目の歌唱シーンで印象的だったフレーズが、物語の進行に合わせて主語を変えて再登場するという、この手のこんだ演出…
いかにもミュージカルらしくてゾクゾクしちゃいます♡
その一方で日本語吹替の歌詞では Mother knows best に対応する歌詞が存在しないため、英語版の歌詞のように主語が変化する仕掛けが上手く発動できない事態が発生。
なんなら私のように初見時に塔でゴーテルが歌っていたのと同じ曲と認識できなかった人も多かったのではないかと思われます…!
「お母様はあなたの味方」英語でもう一度聴いてみよう!
最後に今回の記事の内容をおさらいしましょう♪
・「お母様はあなたの味方」の原題は Mother Knows Best
・Mother knows best というフレーズは歌詞の中にも何度も登場するよ
・リプライズでは主語が Mother から Rapunzel に変わって、再びこのフレーズが登場するよ!
「お母様はあなたの味方」の一度目の歌唱シーンとリプライズでの共通点と違いは、英語の歌詞で聞くことで、よりはっきりと伝わってくるはず♡
普段日本語吹替版で『塔の上のラプンツェル』を見ているあなたも、ぜひ英語版で「お母様はあなたの味方」の場面を見返してみてくださいね!
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