Momijiが実際にDisney+の作品を使って勉強する中で、英語的に〝気になるな〟〝おもしろいな〟と思った場面を、解説とともにご紹介♪
今回は『塔の上のラプンツェル』より、原語のフリン・ライダーの台詞から魔法の花とお城の位置関係について考えます。
フリンが語る、魔法の花の物語
映画『塔の上のラプンツェル』はどんなシーンから始まるか、皆さんは覚えていますか?
いきなりラプンツェル登場!
…というわけではなく、この映画でいちばん初めに声を発するのは、この物語のもう一人の主人公ともいえるお尋ね者のフリン・ライダー。
彼がナレーターとなって、ラプンツェルの物語のプロローグ部分を私たち観客に語って聞かせる…という構成になっています。
このプロローグがかなり盛りだくさんの内容でして…
・魔法の花について
・ヴィランのゴーテルについて
・ラプンツェルの両親について
・ゴーテルのラプンツェル誘拐について
・ラプンツェルが塔の中でどう育ったかについて
・毎年夜空に放たれる無数の灯りについて
…などなど。
これらのトピックが5分くらいの間にぎゅと詰まっています。
英語でいきなりすべて理解しようとすると頭がパンクしちゃうレベルの情報量なので、一時停止や巻き戻しをしながら、ゆっくり自分のペースで聞き取ったり意味を調べたりすることをオススメします 笑
さて、そんなこの一連の流れの中で、私が気になったのは、魔法の花についての解説がひと通り終わった後、ラプンツェルの故郷である王国に話題が移るシーン。
タイムラプスのように王国発展の様子が映し出される場面で、吹替版のフリンはこう言っています。
さて、何世紀も過ぎて、そこから目と鼻の先に王国ができた。
塔の上のラプンツェル 00:01:34~
補足しておくと、「そこから」の「そこ」というのは、魔法の花が生えている場所のこと。
吹替の台詞によると王国は魔法の花の〝目と鼻の先〟にあるそうですが、その言葉を聞いて想像する距離感は人によって案外まちまちではないでしょうか!?
そもそも〝目と鼻の先〟は日本語ならではの慣用句なので、英語の台詞ではまったく異なる表現がされているはず!
ということで今回の記事では、フリンの英語の台詞から、魔法の花と王国の位置関係について考察してみたいと思います!
英語の台詞を大解剖!
こちらのフリンの台詞、原語だとこのように言っています。
Centuries passed and a hop, skip and a boat ride away there grew a kingdom.
塔の上のラプンツェル 00:01:34~
(ちなみに、英語字幕には反映されていませんが、冒頭に間投詞の well という単語も口にしています)
「何世紀も過ぎて」にあたるのが centuries passed 。
century が複数形であることから、1世紀どころか何世紀も経っているとわかります。
この後ゴーテルが魔法の花の力で若返る場面でも改めてフリンから説明がありますが、この台詞からもゴーテルが何百年も生き続けていることが推測できますね。
「王国ができた」にあたるのが there grew a kingdom 。
growには「成長する」「発展する」という意味があります。
日本語字幕では「王国が栄え」という訳になっているので、字幕のほうが grow の本来の意味により近いですね。
そして、「目と鼻の先に」にあたるのがa hop, skip and a boat ride awayの部分。
先ほども書いた通り〝目と鼻の先〟は日本語独特の言い回しなので、当然 eye も nose も文中には出てきません。
では一体どんな表現になっているのか?
そこから魔法の花と王国の位置関係についてどんなことがわかるのか?
詳しくチェックしてみましょう!
【気になるポイント①】ホップ、〝スキップ〟、ジャンプ?
しかし!
距離の話以前にひとつ気になることが。
今回深掘りする黄色マーカーの箇所で、まずぱっと目に入る単語は hop 。
hop には、動詞としては「ぴょんぴょん跳ぶ」、名詞としては「(人の)片足跳び, 跳躍」といった意味があります。
そう〝ホップ、ステップ、ジャンプ〟の〝ホップ〟のことです!
そんな hop のお隣に、コンマを挟んで s から始まる単語が見えます。
きっと大半の人 (※ Momiji を含む) が
〝お、それじゃあ次にくる単語はきっと step だな!〟
と思うのでしょうが、よくよく見てみると…
あれ? step じゃなくて skip になってる???
一瞬自分の見間違いかと思いましたが、英語字幕には確かに skip と書いてありますし、音声を聞いてみても (早口で聞き取りにくいですが) skip と言っている模様。
これはしっかり調べなくては…!と、電子辞書の成句検索機能を使って hop と skip の両方の単語が入った成句がないか検索したところ、出てきた見出し語は…
a hop, skip [step], and (a) jump
…なんということでしょう!
〝ホップ、ステップ、ジャンプ〟も決して間違った表現ではないのですが、それと同じ意味を表す表現として〝ホップ、スキップ、ジャンプ〟 もちゃんと辞書に載っているのです!
というか、むしろ skip を使っているバージョンのほうがメイン扱い 笑
しかも実を言うと、私がこの表現に出会うのは初めてではなくてですね…
ついこないだまでこのブログで集中的に取り上げていた『ピーター・パン』にも、実は〝ホップ、スキップ、ジャンプ〟が登場していたんです!
どのシーンかというと、ティンカー・ベルがフック船長に騙されて、ピーターの隠れ家の場所を教えてしまう場面。
足にインクをつけて地図の上を道案内するティンクを見ながら、フック船長が口にする台詞です。
Hop, skip and a jump across Crocodile Creek.
ピーター・パン 00:55:36~
次にワニの川をホップ、スキップ、ジャンプだな。
こちらも step ではなく skip をが使われていますね!
ちなみに、吹替版の台詞でも、日本語で一般的な〝ホップ、ステップ、ジャンプ〟ではなく、原語と同じ〝ホップ、スキップ、ジャンプ〟という訳を採用しているところが興味深いです。
〝タラ〟は〝タコ〟に変わっていたのに…(こちらの記事参照)
【気になるポイント②】お城に行くには○○○移動が必要
hop の次が step ではなく skip である謎は解けましたが、それに続いて登場する言葉は…
jump ではなく a boat ride away となっています。
boat の意味は、もちろん「ボート」、「小舟」。
ride は、動詞としてだと「乗る」、名詞としてだと「〔馬・自転車・乗物などに〕乗ること」などと訳されます。
さらに、略式表現ではありますが、ride は「〔乗物に〕乗っている時間[距離]」という意味もあり、たとえば a short train ride away で〝電車に乗って少しくらいの距離のところに〟と訳すことができます。
なのでフリンの言う a boat ride away は、直訳すると〝ボートに乗って移動するくらいの距離のところに〟という意味になります。
ということで、ここまでの情報をまとめると、
〝 魔法の花が生えている場所から、ホップ、スキップ(ステップ)+ボート移動くらいの距離感のところに王国ができた〟
ということが、英語でのフリンの台詞からうかがえます。
ホップ、スキップ(ステップ)、ジャンプでたどり着けるほどお手軽ではないけれど、船を使えば行き来ができる場所のようですね。
日本語吹替では〝ボート移動〟についてには触れられておらず、日本語字幕も「やがて 数百年が過ぎ その地には王国が栄え」というあっさりした訳になっているので、これはまさに英語の台詞を理解することでしか得られない情報!
もっとも、映像を見れば、魔法の花が生えている崖から海を隔てた場所に王国が発展していく様子がわかりますし、少し後のシーンでは王国の〝魔法の花捜索隊〟の皆さんが船で移動する様子も描かれているので、たとえこのフリンの台詞がなくても魔法の花と王国の距離感はつかめるようにはなっているんですけどね…!
だからこそ吹替や日本語字幕ではその情報はカットしても大丈夫という判断になったのではないかと思います。
ということで、皆様も魔法の花を捜しに行く際には、船のご手配をどうぞお忘れなく♪
【おまけトリビア】 「魔法の花」の原題は…
ラストに少しだけこぼれ話を。
プロローグ内では、ゴーテルや幼少期のラプンツェルによって、癒やしの魔法を発動させるための不思議な歌、「魔法の花」が何度か歌われます。
花そのものについては英語の台詞でも、 a magic golden flower といった表現がされているのですが、曲のほうの原題には magic という単語も flower という単語も実は使われていないのをご存知でしょうか?
映画のエンドロールや、サントラ盤の情報を見るとわかるとおりり、「魔法の花」の原題は Healing Incantation といいます。
healing は「癒やしの」という意味の形容詞。
ヒーリングミュージックの〝ヒーリング〟ですね!
そして incantation の意味は「呪文」。
これは私自身も、今回じっくり調べてみて初めて認識した単語でした。
呪文というと spell という単語がぱっと頭に浮かぶのですが(綴りも短くて覚えやすいですしね 笑)、incantation もこれを機に覚えます…!
そもそも映画の原題( Tangled =「もつれた」「からまった」)が邦題とまったく違う『塔の上のラプンツェル』、楽曲のタイトルについても原題と邦題が大きく異なるものが多いので、それについてもまた登場シーンに合わせて追々ブログ記事で紹介していこうと思います!
どうぞお楽しみに♡
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