Momijiが実際にDisney+の作品を使って勉強する中で、英語学習的に〝気になるな〟〝おもしろいな〟と思った場面を、解説とともにご紹介♪
今回は『ピーター・パン』より、品詞の異なる複数の that が使用されているダーリング氏の台詞を取り上げます。
【今回の台詞】夜空に浮かぶ海賊船
いよいよ『ピーター・パン』編の最後の記事となりました。
最後に取り上げる台詞はこちらです。
You know, I have the strangest feeling that I’ve seen that ship before.
ピーター・パン 01:15:48~
パーティーを終えて帰宅したジョージ&メアリーのダーリング夫妻。
窓辺でうたた寝していたウェンディは目を覚ますと、ネバーランドでの冒険の思い出を興奮気味に2人に語り始めます。
きっとウェンディは寝ぼけて夢の話をしているだけ…
最初はそんなふうに考えながら娘の話を聞いている様子の2人でしたが、窓から夜空を見上げると、そこには満月を横切る海賊船の影が。
それを目の当たりにしたパパのジョージがつぶやくのがこの台詞です。
成長の過程でいつのまにか忘れてしまっているだけで、誰もがかつては子どもの心を持っていた…
そんなことを感じさせてくれる、この映画で伝えたかったメッセージがぎゅっと詰まった感動のラストシーン。
高揚感溢れる「きみもとべるよ!」のリプライズもあいまって、胸が熱くなります♡
そんな『ピーター・パン』の物語を総括する大切なこの台詞には、よく見ると that という単語が2回登場します。
実はこの2つの that は、見た目こそ同じですが、それぞれまったく違う役割を持っています。
that にはいろんな用途があるからこそ、ひとつひとつ注意深くチェックしてその役目をしっかり見極めたいところ 。
ということで、 that の見分け方の練習をして、『ピーター・パン』編を締めくくりたいと思います!
【今回の注目ポイント!】この that は、どんな役割の that ?
You know, I have the strangest feeling that I’ve seen that ship before.
that の3大用途を確認!
that という単語を聞いて、みなさんは使い道をいくつ思いつきましたか?
ここでは代表的なものを3つ紹介しておきたいと思います。
①指示代名詞の that
〝指示代名詞〟と聞くとなんだか難しそうに聞こえますが、要するに「あの」と訳す that です。
おそらく英語の授業で初めて that が登場したときに習う意味がコレだと思います。
He lives in that house. (彼はあの家に住んでいる。)
②接続詞の that
接続詞の that は、前に置かれた動詞や名詞と、that の後ろに置かれた文とを、くっつける役目を持つ that。
よく〝…ということ〟と訳されて動詞の目的語になったり、〝…という〟と訳されて名詞を修飾したりします。
I told him that the meeting would start at two.
(私は彼に会議は2時に始まるということを伝えた。=私は彼に会議は2時に始まると伝えた。)
Do you know the fact that Goofy has a son?
(あなたはグーフィーに息子がいるという事実を知っていますか?)
③関係代名詞の that
ラストに紹介するのは関係代名詞の that。
名詞がもつ特徴を形容詞1語では表現しきれないときに、その名詞と説明の文をくっつけてくれるのが関係代名詞です。
I know the girl that you met yesterday. (私はあなたが昨日会った女の子を知っている。)
ちなみに、名詞を修飾する接続詞の that と関係代名詞の that の見分け方は、ずばり…
that の後ろに続く文が、完璧な文であれば接続詞の that 、完璧な文でなければ関係代名詞の that となります。
たとえば、いま挙げた例文でいうと、
Goofy has a son. → 〝グーフィーには息子がいる〟という完璧な文 → 接続詞の that
You met yesterday. → 〝あなたは昨日会った〟という、誰と会ったのかわからない不完全な文 → 関係代名詞の that
というふうに見分けます。
今回のダーリング氏の台詞に登場する that も、これをふまえて読み解けば、 that の役割がするっと見えてきますよ!
【1つ目の that】感じているのはどんな気持ち?
では実際にジョージの台詞内の that が3つの用途のうちのどれに当てはまるのか考えてみましょう。
まずは1つ目の that から~!
You know, I have the strangest feeling that I’ve seen that ship before.
that の前に the strangest feeling という名詞、後ろに I’ve seen that ship before という文が置かれているところから察するに、どうやら②接続詞か③関係代名詞の可能性が高そうです。
二択にまで絞ったところで、先ほど紹介した②接続詞と③関係代名詞の出番です!
I’ve seen that ship before. には、I という主語や see (ここでは過去分詞の seen という形になっています)という動詞がありますし、他動詞である see にはちゃんと that ship という目的語もあります。
これぞまさに〝完璧な文〟!
that の後ろに完璧な文が置かれている場合、その that は「~という」と訳す接続詞の that でしたね。
ということで、この that の正体は②接続詞と判断することができます!
【2つ目の that】指しているのはどの船?
続いてもうひとつの that に注目です。
You know, I have the strangest feeling that I’ve seen that ship before.
1つ目の that とは異なり、 that の前には see (ここでは過去分詞の seen という形)という動詞が、そして後ろには ship という冠詞(a 、 the など)がついていない名詞が置かれています。
・後ろに置かれている文字列が、どう見ても文ではない
・ that ship で〝あの船〟と違和感なく訳せる
という条件から考えて、この that はお馴染みの①指示代名詞の that と考えることができます!
・英文に登場する that は主に①指示代名詞、②接続詞、③関係代名詞の
3パターンの可能性が考えられる
・②接続詞と③関係代名詞は、どちらも that の後ろに文が置かれるが、
その文がすべての要素が揃った完璧な文であれば②接続詞、
何らかの要素が欠けている完璧でない文であれば③関係代名詞と見分けることができる
【読解 tips】 strangest の謎を追え!
続いてはその他の単語や文法事項に注目です。
今回は私も今回調べてみて初めて知った、ちょっとマニアックな最上級の使い方について紹介します。
You know, I have ①the strangest feeling that I’ve seen that ship before.
①【文法】絶対最上級
この台詞を自分なりに訳してみようとしたときに、引っかかったポイント。
それは the strangest の部分でした。
strangest は strange 「奇妙な」「不思議な」の最上級の形。
最上級といえば〝彼はこの3人の中でいちばん背が高い。〟など、複数のものの中で〝いちばん○○〟を表す表現。
しかしこの台詞では、一体どんなものの中で〝いちばん奇妙〟なのか、その比較の対象となるものが文中に見当たらないのです。
一体どうしたものかと、電子辞書で『ロイヤル英文法』を開き、最上級に関する項目をあれこれ調べてみたところ…
見つかったのが〝絶対最上級〟という項目でした!
比較の対象をはっきり表さず,漠然と程度が極めて高いことを表す最上級の用法を絶対最上級という。
『徹底例解 ロイヤル英文法 改訂新版』旺文社
つまり、何かと比較するわけではないけれど、とにかく〝とても○○〟ということを表すときにも、最上級を使うことがあるのだそうです。
なのでここでの the strangest feeling は、〝とても奇妙な気持ち〟とでも訳すとよさそうですね。
私もまだまだ知らないことだらけの英文法の世界…
またひとつ賢くなれました!やったー!
【和訳に挑戦!】冒険の思い出は永遠に
ラストにここまでの情報をまとめて和訳にチャレンジしてみましょう!
You know, I have the strangest feeling that I’ve seen that ship before.
まず、冒頭の You know, については、以前にも紹介した通り、特に深い意味を持たないつなぎの言葉です。
なのでここでは、この台詞の前後のダーリング氏のリアクションに合うように、〝そうだ〟くらいに訳しておきましょう。
続く I have the strangest feeling は、直訳すると
〝私はとても奇妙な気持ち・感覚を持っている〟
となりますが、これはつまり、
〝私はとても奇妙な気持ち・感覚だ〟
ということを言っているわけですね。
○○な気持ちだ、という話をするときに have という動詞を使うところが、英語らしい独特の表現だな~と感じます。
そして、ここでいよいよ that 登場!
1つ目の that は接続詞の that でしたね!
この that の後ろに続く文が、 the strangest feeling = 〝とても奇妙な気持ち〟の詳細を説明してくれます。
ということで、どうしてダーリング氏が奇妙な気持ちになっているのかというと、その理由が I’ve seen that ship before の部分にあたります (ここに指示代名詞である2つ目の that が使われていますね)。
動詞の部分が have + 過去分詞 になっているので、この文は現在完了の文。
しかも before が一緒に使われている現在完了となると、これは十中八九〝以前に~したことがある〟という経験を表す現在完了と考えられます。
(現在完了の意味が〝継続〟〝完了〟〝経験〟のどれなのかを見分けるときは、一緒に使われている他の単語やフレーズが最強のヒントになるのです!)
以上の情報を総合すると、この文は、
〝私は以前にあの船を見たことがある〟
という意味になります。
では、ここまでに訳した各パーツをドッキングしちゃいましょう!
かなり直訳的で不自然ではありますが…
〝そうだ、私は以前にあの船を見たことがあるというとても奇妙な感覚がする。〟
…という感じでしょうか。
それまでピーター・パンの物語をくだらないと言っていたダーリング氏が、空飛ぶ海賊船の影を目にしたことで、子ども時代の記憶がよみがえる不思議で素敵な感覚を味わっている、という状況を把握できればオッケーです!
状況は理解できるけどナチュラルな日本語に訳すのがなかなか難しいこの台詞、公式の日本語吹替でのプロの訳も確認しておきましょう。
You know, I have the strangest feeling that I’ve seen that ship before.
そうだ、あの船なら前にも一度見たことがあるよ。
the strangest feeling の持つ意味はばっさりカットされてしまっていますが、大切な〝あの船を見たことがある〟という部分はしっかり伝わってくる訳になっています。
ちなみに字幕版での日本語字幕では、
「不思議だ 前に見たことがある」
と、こちらでは strangest がちゃんと生きています。
私はどちらかというと、こちらの字幕の訳のほうが、ダーリング氏の驚いている表情にマッチしている感じがして好みかもしれません…!
ということで、これにて『ピーター・パン』の物語は無事に完結です!
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました♡
次の物語でも英語を楽しむ心を忘れず楽しく冒険しましょう~!
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