【今回の場面】行方不明のプリンセスの正体は…
『塔の上のラプンツェル』の物語もいよいよ大詰め。
今回の場面では、失意の中で塔に戻ったラプンツェルが、ゴーテルのひょんなひとことから
〝行方不明のプリンセス〟の正体は私だ!
ということに気づきます。
いつもの調子でラプンツェルをなだめるゴーテルですが、もうこれまで通りには事は進みません。
ユージーンが処刑されると聞かされショックを受けながらも、ラプンツェルは力強くゴーテルに怒りをぶつけます。
今回の記事ではそんな場面からラプンツェルの台詞をピックアップ!
日本語と英語のニュアンスの違いに注目しながら、この重要シーンのラプンツェルの台詞を掘り下げて味わってみましょう!
ラプンツェル渾身のスピーチを日英徹底比較
ユージーン処刑の話のショックに乗じて、ラプンツェルを言いくるめようとするゴーテル。
しかし真実に気づいてしまったラプンツェルは、もうお母様の言いなりにはなりません。
次の台詞で彼女にはっきりとノーを突きつけます。
やめて! 外は怖いなんてみんな嘘だった。
私がプリンセスってことも隠してた。
塔の上のラプンツェル 01:18:55~
(こちらは日本語吹替版の台詞です)
これまで嘘を重ねて真実を隠してきたゴーテルに対する強い怒りが感じられる台詞ですね。
そんなこちらの台詞、オリジナルの英語版ではどのようなものになっているのでしょうか?
答えはこちら!
No! You were wrong about the world.
And you were wrong about me!
塔の上のラプンツェル 01:18:55~
いかがでしょう?
日本語吹替の台詞と見比べてみて、
あれ? 英語の台詞には
〝嘘〟(lie)も〝プリンセス〟(princess)も〝隠す〟(hide)も
登場しないんだ?
…と、日本語吹替の台詞内の重要な単語がごっそり消えていることに、少し違和感をおぼえたかたもいるかと思います。
代わりに2度にわたって登場しているのが
〝you were wrong about ○○〟
というフレーズです。
wrong は「誤っている」「間違った」という意味の形容詞。
たとえばこんな文で使われます。
I was wrong about her name.
(私は彼女の名前を勘違いしていた。)
それをふまえて、英語版でのラプンツェルの台詞を直訳すると、
いいえ! あなたは世界について間違っていた。
そしてあなたは私について間違っていた。
…という意味になります。
この台詞だけ抜き出して読むと、何が言いたいのか少しわかりにくいですが…
あなた=ゴーテルがどう間違っていたのかは、ここまでのストーリーや台詞の中で描かれています。
まず〝世界〟についての間違いは、少し前の場面で言っていたこの台詞のことだと思われます。
時間を数分前に巻き戻して、塔に帰ってきたばかりのラプンツェルに対してゴーテルが言っていた台詞を思い出しましょう。
The world is dark and selfish and cruel.
外は闇に包まれてる。身勝手で残酷な人ばかり。If it finds even the slightest ray of sunshine, it destroys it.
塔の上のラプンツェル 01:15:34~
太陽の一筋の光が差し込んだとしても、すべて消されてしまうわ。
世界は身勝手で残酷な人ばかり…
ゴーテルさん、それって自己紹介ですか…?
それに続けて、太陽の光が差し込んだように見えても、それは消えてしまう、とも言っています。
なんとも希望のない世界の見方ですね。
皮肉なことに、この〝太陽の光〟というワードがきっかけで、失意のどん底にいたラプンツェルは真実に気づいて気力を取り戻すわけですけどね!
そして〝私〟=ラプンツェルについての間違いは、「お母様はあなたの味方」の場面を筆頭に、映画の序盤から何度も繰り返されてきた
あなたは無知でかよわくて、
外の世界では生きていけないのよ^^
…というラプンツェルの自尊心をゴリゴリ削る考え方の数々だと考えられます。
でも実際のラプンツェルは、夢を叶えるための知恵もバイタリティも持ち合わせた勇敢な女性!
ゴーテルが言い聞かせてきた話とは全然違うのは、ここまでのお話の中で描かれている通りです。
- 嘘をついていた、隠し事をしていた、ということを非難する日本語吹替版
- ゴーテルが持っている考え方そのものを否定する英語版
ラプンツェルがゴーテルに怒りをあらわにしている点は同じでも、少しニュアンスが違って聞こえるところがとても面白いですよね!
ラプンツェルVSゴーテルの主張、Dオタの私はこう解釈した!
〝ゴーテルの考え方自体を否定する〟というニュアンスが強い、英語版でのラプンツェルの台詞。
それを踏まえた上で、ここからはこの台詞の個人的&Dオタ的解釈について語らせてください!
なお、あくまで一ファンの考察であり公式見解ではありませんので悪しからず…
まずは、ラプンツェルが自分の正体に気付くきっかけとなったゴーテルの台詞を再度ご覧ください。
The world is dark and selfish and cruel.
外は闇に包まれてる。身勝手で残酷な人ばかり。If it finds even the slightest ray of sunshine, it destroys it.
塔の上のラプンツェル 01:15:34~
太陽の一筋の光が差し込んだとしても、すべて消されてしまうわ。
みなさんはこの台詞を読んで、どのように感じるでしょうか?
いかにもヴィランっぽい考え方だな~…
という印象を受けるかもしれませんが、果たして本当にそうでしょうか?
ゴーテルの台詞だとわかって読むと確かにそう感じますが、
結局人間なんてみんな自分のことが一番大切なんだから、
世の中身勝手な人ばかりだよ…
どうせ後で裏切られるに決まってるから
期待するだけ無駄…
希望なんて持たないほうがいい…
…というふうに普段から考えている人って、意外に世の中にたくさんいるのではないでしょうか?
暗いニュースや酷いニュースを聞いていると、普段ポジティブな人だってそう感じる瞬間はきっとあると思います。
だけど、ラプンツェルはそんな考え方に、
あなたは世界について間違っていた。
私について間違っていた。
と、はっきり異を唱えます。
ゴーテルの考え方そのものに切りこむ英語のラプンツェルの台詞を読んで、
この台詞ってもしかして、
ラプンツェルの怒りを表しているだけでなく、
ディズニーの考え方が集約されているのでは…?
と感じました。
もちろん世の中には暗い出来事がたくさんある。
身勝手で残酷な人だっている。
希望なんてすぐに消えてしまう、と感じてしまうことだってある。
だけどディズニーの映画作品やテーマパークは一貫して、世界の明るい側面を、人の優しさを描いてきたと思うのです。
世の中には楽しいこともたくさんある。
人は優しさや思いやりをもてる。
闇の中にだって夢や希望は生まれる。
ゴーテルの考えと、それに反論するラプンツェル…
このやりとりはふたりの関係の変化を表すと同時に、ディズニーが百年以上の歴史の中で築き上げてきたポリシーのようなものを表す場面となっていると私は感じました♡
【まとめ】wrong から感じるディズニーの強い信念…!
最後に今回の記事の内容をおさらいしましょう♪
今回の記事では wrong を使った表現を紹介しました。
・wrong about … は「…を誤っている」という意味!
〝○○を勘違いしていた!〟と伝えたいときなどに使えるよ!
そして!
この wrong が使われたラプンツェルの台詞の日本語吹替と英語のニュアンスの違いを通して、ここにディズニーという世界全体に通じるメッセージが込められているのかも!という考察に至りました。
なんといってもウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ制作の長編アニメーションの記念すべき50作目ですからね…!
これだから英語と日本語の台詞の比較&分析は楽しくてやめられません♡
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