Momijiが実際にDisney+の作品を使って勉強する中で、英文法的に〝気になるな〟〝おもしろいな〟と思った台詞を、文法の解説とともにご紹介♪
今回は『リトル・マーメイド』より、知覚動詞である see が使われているトリトン王の台詞を取り上げます。
【今回の台詞】伝わらない、アリエルへの想い…
今回取り上げる台詞はこちら。
Do you think I want to see my youngest daughter snared by some fish-eater’s hook?
リトル・マーメイド 00:13:07~
かわいいお前が、あの魚を食う連中にさらわれたらどうする?
今回はコンサートをすっぽかしたアリエルに、トリトン王(+セバスチャン)がお説教をする場面から台詞をピックアップしてみました♪
最初はコンサートの予定を忘れていた娘を冷静に咎めていたトリトン王ですが(むしろセバスチャンの方がヒートアップ気味…笑)、フランダーが口を滑らせたせいで海の上に遊びに行っていたことがバレると様子が一変!
人間は危険か否かを巡り、アリエルと激しい口論になってしまいます。
その中でトリトン王が発する台詞がこちらというわけです。
トリトン王が人間という存在をどう捉えているのか、この後に続く「パート・オブ・ユア・ワールド」のシーンのアリエルと対比するかたちで浮き彫りにする、とても重要な場面ですよね!
さらに、英語学習的に見ると、この台詞、知覚動詞である see の使い方の絶好のサンプルにもなっている上に、日本語吹替の訳がかなり意訳となっているので、なかなか読解しがいのある1文となっています。
アリエルにとってはあまり聞きたくない台詞でしょうが、私たちはがっつりこの台詞に向き合って英語の知識をさらに深めていきましょう♪
【読解のポイント】〝知覚動詞〟って何?
まずは〝知覚動詞〟って何?というところから見ていきましょう。
知覚動詞とは、その名の通り〝見る〟〝聞く〟〝感じる〟といった五感を使って何かを感知する動作を表す動詞のこと。
英文法的な定義では、その中でも、以下の構文のかたちをとるものを〝知覚動詞〟と呼んでいます。
S + V(知覚動詞) + O + 動詞の原形(原形不定詞)/現在分詞(ing形)/過去分詞
この構文で、〝SはOが…する/している/されるのをVする〟というふうに訳します。
具体的な単語でいうと see 、watch 、hear 、feel などが知覚動詞の代表例です。
それでは実際に知覚動詞 see (文中では過去形にしているので saw)を使った例文をいくつか見てみましょう!
I saw him go out of the room.
私は彼が部屋から出るのを見ました。
I saw her playing the guitar.
私は彼女がギターを弾いてるのを見ました。
I saw a thief caught by the police.
私は泥棒が警察につかまるのを見ました。
おわかりいただけたでしょうか…?
そして、一体誰が何をする/している/されるのを見たのか?という情報がその後ろに続きます。
この何をする/している/されるの部分が、原形なのか、現在分詞なのか、あるいは過去分詞なのかによって、訳し方が変化するというわけです。
今回のトリトン王の台詞には、上記の3つ目の例文と同じタイプである、
V(知覚動詞) + O + 過去分詞
が文中に組み込まれています。
具体的には以下の部分です。
①see ②my youngest daughter ③snared by some fish-eater’s hook
まず①の部分に知覚動詞の see が使われているのは見ての通りですね。
②の my youngest daughter はOの部分にあたります。
直訳すると〝私の最も若い娘〟となりますが、要するに〝私の末娘〟という意味です。
(アリエルは7人姉妹の末っ子でしたよね♪)
そして③は動詞 snare 「〈動物〉をわなにかける」の過去分詞形。
これらの情報を総合すると、この部分の訳は、
〝私の末娘が魚を食べる奴らの釣り針にかかるのを見る〟
という意味になります。
・知覚動詞とは、〝見る〟〝聞く〟〝感じる〟といった
五感を使って何かを感知する動作を表す動詞で、see 、hear 、feel などが代表例
・S + V(知覚動詞) + O + 動詞の原形(原形不定詞)/現在分詞(ing形)/過去分詞
という構文で、〝SはOが…する/している/されるのをVする〟と訳す
【直訳チャレンジ!】娘の苦しむ姿は見たくない!
ここでこんなことを思ったかたもいるかもしれません。
せっかく知覚動詞のseeの話をしているのに、日本語吹替の台詞に〝見る〟なんてワード、ひと言も入っていなくない!?
…おっしゃるとおり!
日本語吹替版の台詞は、台詞の意図をぎゅっと濃縮した意訳になっています。
では直訳だとどうなるのか?
知覚動詞以外の部分にも注目して、原語版ではどんな台詞だったのか、一緒に見ていきましょう!
①Do you think ②I want to see my youngest daughter snared by some fish-eater’s hook?
ひとつの文の中にたくさんの動詞が使われている少しややこしい構造になっていますが、頭から順を追って説明していきますね♪
① Do you think (that) … ?
Do you think … ? で始まる疑問文では、目的語にあたる箇所に、接続詞の that (省略可)を用いた名詞節が入ることがよくあります。
この台詞もまさにそのパターン。
かな~り長いですが、〝I want to see my youngest daughter snared by some fish-eater’s hook ということ〟が、この文の目的語になります。
Do you think … ? 自体の訳し方は〝あなたは…と思いますか?〟。
これと先ほどの目的語をくっつけると、〝あなたは I want ~ by some fish-eater’s hook だと思いますか?〟というこの文の大枠が見えてきます。
② I want to do …
次は目的語となっている名詞節の中身を見ていきましょう!
want to do は会話の中でもよく使う定番フレーズで、「…したいと思う」という意味。
一体何をしたいのか?というと、その部分に、最初に〝知覚動詞〟の説明で チェックした see my youngest daughter snared by some fish-eater’s hook が入るというわけです。
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トータル4つもの動詞が含まれている非常に複雑な文ですが、ここまでの情報をまとめると、トリトンのこの台詞の直訳は次の通りになります。
おまえ(=アリエル)は、私(=トリトン)が自分の末娘(=アリエル)が魚を食べる奴らの釣り針にかかるのを見たいと思うのか?
…長文かつ入れ子構造で非常にわかりにくいですが、要するに、
〝おまえ、自分の娘が人間につかまる場面を私が見たいとでも思ってるのか!? 見たくないに決まっているだろ!〟
というニュアンスのことを熱く言い聞かせています。
この複雑な構造の台詞から感じられるトリトン王の娘を心配してやきもきする気持ちを抽出して、シンプルでわかりやすい意訳にしたのが、日本語吹替版の台詞、ということですね!
我が子を思うトリトンの切実な気持ちが詰まった台詞ですが、アリエルの心にはなかなか届かず、その結果トリトンの言葉も高圧的になっていき、アリエルはますます反発を強めて…
ううっ、これは泥沼展開!
親子ゲンカは、庶民だろうと王族だろうと、そして人間だろうと人魚だろうと、どこの家庭でも同じみたいですね…!
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