吹替と英語、ここが違う! 「自由への扉」トリビア3選【塔の上のラプンツェル】

学習記録

Momijiが実際にDisney+の作品を使って勉強する中で、英語的に〝気になるな〟〝おもしろいな〟と思った場面を、解説とともにご紹介♪

今回は『塔の上のラプンツェル』より、ラプンツェルが歌う「自由への扉」の吹替版と英語版の違いにまつわるトリビアを3つご紹介します。

塔での暮らしとラプンツェルの本音…「自由への扉」

いよいよラプンツェル本人が登場し、物語が本格始動!
その幕開けを飾るのが、ラプンツェルが塔の中でどんなことを想い、どんなことをして暮らしているのかが描かれるナンバー、「自由への扉」です。

主人公の〝外の世界への憧れ〟を描いたディズニーらしい曲であると同時に、曲調は THE ミュージカル!というよりも結構ポップなところが面白いですよね♪
映像の面でも、塔の中でのアクティビティが次々に描かれて、目にもとっても楽しい場面です。

…と、私が言葉で説明するよりも、公式動画を見ていただくほうが手っ取り早いですね!
どうぞ~♪

Mari Okonogi – 自由への扉 (From『塔の上のラプンツェル』)
Mandy Moore – When Will My Life Begin? (From “Tangled”/Sing-Along)

日本語と英語、どちらもYouTubeにアップされていますが、皆さんはどちらのバージョンが印象的でしょうか?
私の場合は、愛用の音楽アプリにディズニーソングをリクエストすると大抵日本語吹替版の曲を流してくれるので、最近は日本語吹替版のイメージがすっかり強くなっています 笑

そんなこの「自由への扉」、実は英語と日本語では歌詞の中に含まれる情報量がかなり異なることをご存知でしょうか?
(英語の曲に日本語の歌詞をつけようとすると、メロディーと詞を合わせなければならないという制約上、必ず起こる現象なので、決して誤訳があるとか翻訳が下手とかそういう話ではありません^^)

今回は「自由への扉」の日本語吹替と原語の違いにまつわるトリビアを3つご紹介します!

【トリビア①】そもそも曲名が全然違う

歌詞の話題に入る前に…
そもそも「自由への扉」の原題ってご存知ですか?

日本語タイトルを英語に直訳すると The Door to Freedom といったところですが、正解は…

When Will My Life Begin?

…ご覧の通り、全然違います!笑

疑問詞(いわゆる〝5W1H〟ってやつですね)が使われている疑問文の典型例みたいなこのタイトル。
直訳すると〝私の人生はいつ始まるの?〟という意味になります。

もちろん、このフレーズは歌詞の中にも使われていて、サビの終わりに登場します。
塔の中での生活を前向きに楽しもうとしながらも、だんだんと無視できなくなってきたラプンツェルの本音や疑問が、この一文に集約されているように感じられますね。

「自由への扉」は、オープニングの場面以外でも何度かリプライズとして登場しますが、このフレーズがのちのち初めて外の世界に出たラプンツェルの喜びの場面にも関連してきます。
何度見てもあの場面は鳥肌物ですが… それはその場面にたどり着いてからのお楽しみ!ということで♡

【トリビア②】吹替では歌われていないラプンツェルの日課がある

今度は歌詞の内容に切りこんでみましょう♪

ラプンツェルが塔の中で何をして過ごしているかが歌われているこの曲。
ラプンツェルってなんて多趣味なの!と驚くほど、たくさんのアクティビティが歌詞の中に登場します。
(余談ですが、私は常々、ラプンツェルのこの多趣味なところが、吹替を担当されている中川翔子さんとそっくりだな~と微笑ましく感じています♡)

そして、たくさんありすぎるがゆえに、日本語吹替の歌詞では言い換えられたり省かれてしまったりしたアクティビティもちらほら

ここでは、そんな吹替だけではカバーしきれないラプンツェルの日課をご紹介します

papier-mârché

cook 「料理する」や chess 「チェス」など、易しい・イメージしやすい単語が多い中で、あまりにも見慣れなさすぎて私も思わず〝んんっ?〟と首を傾げてしまった単語が、この papier-mârché

ラプンツェルがお面?かぶり物?みたいなものでパスカルをおどかしている映像に合わせて登場する単語です。

日本語吹替の歌詞では「いたずら」と訳されている箇所なのですが、実際のところはどういう意味なのか…

スペルからして明らかに英語ではなさそうなこの単語は、実はフランス語由来
辞書を引くと「混凝紙」だとか「紙張り子」といった意味が載っていますが…

いやいや、その「混凝紙」や「紙張り子」が何なのか、よくわからないんですけど!?

というかたが大半ではないでしょうか?
はい、私もです 笑

さらなる情報を求めて電子辞書の中をさまよっていると、『新英和辞典』にかなりわかりやすい説明が載っていたので、そちらを引用しますね。

箱・盆などの製造に用いる張子[張抜き]の材料; どろどろにした紙にサイズ(size)・のり・樹脂(resin)・油などを入れたもの

『新英和大辞典』研究社、 papier-mârché の項より

なんとなく、ふやかした紙にのりなどを混ぜたものを使って、工芸品を作るようなイメージがわいてきたでしょうか…?
〝パピエマシェ〟をググってみると、箱やトレーなどのアンティークの写真がたくさん出てきますので、興味のある方はぜひ検索してみてください♡
私も楽しくなってきて、アンティークのパピエマシェ製品を扱っているサイトをいくつかネットサーフィンしてしまったのですが、〝原料が紙〟という脆そうなイメージとは裏腹に、実際の仕上がりはかなり丈夫で、パピエマシェの椅子やテーブルなんかもあるそうです。
いやあ、まさか「自由への扉」がきっかけでこんな知識が身につくなんて夢にも思いませんでした…!

ということで、話を「自由への扉」に戻しまして…
この単語が登場する場面でラプンツェルが被っていたお面が、パピエマシェで作ったもの、ということだったんでしょうね。

そして、大半の日本人にとって馴染みの薄いこの〝パピエマシェ〟というものを、歌の短いワンフレーズの中で説明することは到底不可能…!
吹替の「いたずら」という訳は、ラプンツェルがパスカルをおどかしている映像を上手く利用した解決策だったんですね。

ventriloquy

pottery 「陶芸」と candle-making 「ろうそく」+「作ること」=〝ろうそく作り〟の合間に挟まっている ventriloquy という単語…
これも〝聞き馴染みがない単語だな~〟と感じる人が大多数だと思いますが、映像のラプンツェルとパスカルの様子からなんとなく察しがつくのではないでしょうか?

そう、ventriloquy の意味は「腹話術」です!
このときの人形役のパスカルの変顔、可愛いですね♡
(でもラプンツェルが水を飲んでる理由は、調べてもちょっとよくわからなかったです…)

ventriloquy がちゃんと見出し語になっている辞書もありますが、中には未掲載の辞書もあったり…
どちらかというと「腹話術」を表す単語は ventriloquism のほうが一般的なようなので、お手持ちの辞書で見つからないときには、こちらの綴りで調べてみてくださいね!

なお、日本語吹替の歌詞ではどうなっているかというと、文字数の関係上、腹話術の話題は一切出てきません…!
腹話術は、歌詞の上では原語でしか登場しない、レアなアクティビティなのでした!

stretch & sketch

ここまでにご紹介した単語に比べると、この2つの単語はかなり一般的な単語ですね。
〝ストレッチ〟と〝スケッチ〟
日本語の会話の中でも日常的に使う言葉だと思います。

なぜわざわざそんな易しい単語をここで取り上げたかというと、実は日本語吹替での訳し方がとっても面白くて!

どちらの単語も語尾が “etch” で、韻を踏んでいるという楽しい箇所ではありますが、日本語吹替ではメロディーの流れや文字数の関係上、〝ストレッチ〟と〝スケッチ〟をそのまま歌詞に落し込むのはなかなかに困難。

そんな中でどんな訳が当てはめられているかというと…
「ヨガ」と「絵画」
厳密にはストレッチやスケッチとは異なるかもしれませんが、映像の中のラプンツェルの様子とも大きくかけ離れず、なおかつどちらも〝が〟で単語が終わる=ちゃんと韻を踏んでいる!ということで、音は違えど英語の歌詞の楽しさが反映された歌詞になっているのです!

気づいたときには、あまりにお見事な訳詞に鳥肌が立ちました…!
プロってすごい…!
本当にいつもありがとうございます…!!!

【トリビア③】原語ではゴーテルの卑怯さも垣間見える

それまでのアップテンポで明るい雰囲気から一転、曲の終盤はスローダウンして、ラプンツェルがひそかに抱いている願いが歌われます。

吹替版だと…

・明日は私の誕生日で、夜には光が空を飛ぶはず
・私も外に出て、光を見に行きたい

…といった内容が語られます。

これだけでも、塔から出たことがないラプンツェルの外の世界への憧れが伝わってきて、胸がぎゅっと締めつけられますね。

この部分の歌詞が、原語版だとさらに情報量が多くてですね…!
歌詞をそのまま引用するのは避けますが、ざっとこんな内容が歌われています。

・明日の夜は空に光が飛ぶはず
・私の誕生日は毎年そう
・光が飛ぶ外の世界は、どんなところなんだろう?
・私はもう大きくなったんだから、お母様が外に行かせてくれるかも ←NEW

明日の夜に現れるはずの光のこと、誕生日のこと、そして外の世界に行ってみたいという願いのこと…
そこまでは吹替とほぼ同じ情報なのですが、最後に挙げた部分が吹替え版ではまるっとカットされている箇所になります。
(ちなみに日本語字幕にはこの情報も反映されています!)

私としては、ここが特に切なくて、なおかつゴーテルの卑怯さを表している部分でもあると思っていて…

自分の髪の毛の魔法を利用されているだけとはつゆ知らず、ゴーテルを本当の母親だと信じて慕ってきたラプンツェル。
〝大人になったらお母様も私が外に出るのを許してくれるはず〟という内容の歌詞は、塔の外に出てはいけないのは自分が幼くてか弱い存在だから、というゴーテルの言葉を、ラプンツェルが素直に信じていることのあらわれだと思うと、なんかもう切ないやら悔しいやらで…!

ああもう、 今すぐラプンツェルのところに行って、〝君は自由に外に出ていいんだよ!〟と言ってあげたい~~~!!!(謎感情)

…と、全ディズニーキャラクターに幸せになって欲しいオタク心がうっかり暴走してしまいましたが、話題を英語に戻しましょう 笑

この〝吹替と原語で歌詞の情報量が大きく異なる〟現象は、なにも「自由への扉」に限った話ではなく、英語の歌を日本語に訳すと、文字数と音の数、あと口の動きなどの関係上、必ず起きること。
ときにはこうしてじっくり吹替と原語の歌詞を見比べるのも、英語の勉強になるのはもちろんのこと、翻訳家さんの工夫に感心したり、吹替の歌詞ではカットされた新たな情報に驚いたりする時間も、とっても楽しいですよ♪

あなたの好きなディズニーソングでも、英語の歌詞と吹替や字幕の歌詞の比較、ぜひチャレンジしてみてくださいね!

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